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大定峠

国道166号線は、松阪市街の小津町南交差点から西に向かって高見トンネルを抜け、奈良・大阪方面に至る一般国道です。現在も松阪市街の日野町交差点には「左 さんぐう道 右 わかやま道」と書かれた石造りの道標が残っているように、この道は、古くから和歌山街道あるいは紀州街道と呼ばれ、紀州藩の参勤交代路であったばかりでなく、伊勢方面と奈良・和歌山方面を結ぶ重要な街道でした。この166号線は、川俣地区を東西に横断していますが、当時の和歌山街道の道筋と必ずしも一致するものではありません。この和歌山街道の道中、大定峠越えと高見峠越えが難所であったと言われています。大定峠は、飯高町七日市から乙栗子(おとぐるす)へ抜ける峠道にありますが、現在は廃道になっていて使われていません。166号線は、森地区へ抜けて峠道を大きく迂回するように通っています。この古道を乙栗子側から大定峠を目指して歩いてみました。地元の人に尋ねても、その古道を知っている方にすぐには出会えず、忘れられた古道であることを実感しました。ようやく探し当てた入り口は、民家の庭先を抜けて辿り着く場所だったので、その家の方にひと声かけなければ入れませんでした。半信半疑で進んで行くと、荒れ果ててはいるものの徐々に道らしくなってきました。この道を本居宣長も歩いたんだなあ、と感慨にふけりながら半時間ほどで大定峠に到着しました。そして話に聞いていた通り、そこには役小角の祠が祀られていました。生けられていた榊はまだ瑞々しく、辺りの静謐と相俟って厳粛な気分になりました。時折聞こえる鳥たちの囀りと木々の葉のざわめきがすべてでした。

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毎年、ちょうどゴールデンウィークの頃、飯高町七日市の泉谷さんの家の前でお餅撒きが行われます。その縁起も知らず呑気にお餅撒きにだけ参加していたのですが、施主の泉谷勝巳さんによると、ご先祖は、戦国武将鳥屋尾右近将監で、またその後、代々この辺りの街道守をしていた。そのうち鳥屋吉助さんが元禄14年大定峠に役行者の祠を建立した、以来現在に至るまでずっと毎年5月5日に祠にお供えをもってお参りし、その後こうしてお餅撒きをしているのだという。すべて代々の口伝なので古文書のようなものはないのだとおっしゃっているが、そういえば泉谷さんの屋号は鳥屋であって、大定峠の祠の隣の灯籠には鳥屋吉助の銘が刻まれていました。この地域に先祖代々暮らしている人たちはみんな屋号を持っています。今でも屋号で呼び合ったりすることもあります。口伝頼みなのが残念ですが、どうして役小角をお祀りするようになったのか、その経緯は分かりません。ただ、組の人たちも協力してこうして代々受け継がれていることには敬服するばかりです。

※ 役行者(えんのぎょうじゃ)… 役小角(えんのおずぬ)とも呼ばれる。飛鳥時代の山岳呪術者で修験道の開祖とされる。数多くの伝承が残るが、実像は謎に包まれている。

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お熊ヶ池

どこか神秘的な雰囲気が漂う山頂(標高730m)にある伝説の池

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標高730mの山頂付近にある「お熊ヶ池」へは車で登っていけますが、林道は未整備なので走行には十分気をつけてください。

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伝説によると昔の武将が源平の戦いで源氏勢に攻め込まれ、その妻「くまの方」は敵を欺くため我が子を乳母に預け、自らこの池に身を投げたと伝えられています。身を投げた「お熊」は大蛇となって現れ、その姿のまま泣く我が子乳を与えに通ったということです。

(諸説あり)

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そして、この祠は「お熊」を弁天さんとして祀ったもので、いつしかこの池を「お熊ヶ池」と呼ぶようになったそうです。とてもそんな風には見えない浅い池みたいですよね。ところが!この「お熊ヶ池」深いんです。長い年月をかけ水面を草木の根が伸びて絡み合い、水深30cmにも満たないように見えているだけなんです。

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実は、昔の伝説を信じられない私たちは小学生の頃、長い丸太を池の中央あたりに刺してみたことがあります(今思うとすごくバチあたりですね)。すると4mもあろうかという丸太が吸い込まれるように軽く入っていき、丸太が見えなくなってもまだ底に当たる手応えがありませんでした。私たちは怖くなって、逃げるように帰ってきた、という忘れられない想い出があります。

途中、雲海の見えるポイントがあるので雨上がりの明け方はオススメです

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